大栗川通信

元記者でマーケターになった中年男「サパロメ」が、本や映画(アニメ、テレビ)や家電のレビュー、育児やブログ運営、ダイエットなどについて雑記をつづります

やっぱり京アニはすごい!「バジャのスタジオ」(京都アニメーション、三好一郎監督)

 「京アニはやっぱりすごい!」と涙しました。

©株式会社京都アニメーション All rights reserved

NHKが「バジャのスタジオ」をテレビ初放送

 祝日だった11月4日(月)。惰眠をむさぼるつもりだった休日の朝、7歳の息子に叩き起こされ、「ニュースでも見るか…」とNHKにチャンネルを合わせました。すると、たまたま放映されていたアニメに、息子とともに一気に引き寄せられてしまったんです。

 放映されていたのは「バジャのスタジオ」。あの京都アニメーションが自主制作したの短編作品で、監督は放火事件でお亡くなりになった三好一郎(本名:木上益治)さんです。2017年に制作され、イベント「届け!京アニ&Doのいろいろ編」で上映された作品が、今回、テレビ初放送されました(NHKの紹介ページはこちら)。

「バジャのスタジオ」のストーリー概要

 ハムスターのような謎のかわいい小動物が、「バジャ」と名付けられ、とあるアニメ制作会社のペットとして可愛がられていました。

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 このアニメ制作会社は、「ココ」という名前の魔法少女が主人公のアニメを制作しています。スタッフたちが帰宅すると、バジャは会社に一人残されます。バジャの目に映るのは、真っ暗な仕事部屋と、そこに飾られているココの人形と、悪役の「ギー」の人形くらい。

 バジャは、スタッフたちに可愛がられ、幸せでした。ただ、友達が欲しかった。窓の外に見える小さな池にはいつも、アヒルの人形が浮かんでいます。バジャはこのアヒルの人形は友達だと思い込み、いつか一緒に遊べる日が来るのではないかと、夢見ていました。

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 そんなある夜、事件が起こります。いつものようにバジャが窓からアヒルの人形を眺めていると、野良猫が現われ、アヒルの人形を叩いたり噛んだりし始めたのです…。

「バジャのスタジオ」の感想

 息子と一緒に見ながら、目頭が熱くなってしまい、涙を堪えるのに必死だったんですよね(若干こぼれました)。理由は3つあります。

京アニ品質」で表現されたアニメの伝統

 まず、バジャがかわいいんですよね。アニメならではの動きが愛らしく、一つひとつの動作にクスっとしてしまい、とても幸せな気持ちになります。

 こうした動物の愛らしい動きは、ディズニーを起源とするもので、数多くのアニメで表現されています。ただ、京アニの作品で愛らしい動物の動きを表現した作品を見たのは初めてな印象(実際はあるのかもですが、それが「主」ではないことが多いので)を受けました。アニメの伝統の一つとも言える表現を、「京アニ品質」で見れたことに、ある種の感動を感じました。

幸せだけど、何か足りない

 もう一つが、バジャの「幸せだけど、何か足りない」という内なる思いに、今の自分を重ねて観たことです。

 バジャはたくさんのスタッフに愛され幸せですが、「友達が欲しい」という内なる思いを持ち続けています。「幸せだけど、何か足りない」のです。

 小さな生き物の話ですが、そこにどこか自分の今の心境を代弁してくれているように感じました。「幸せだけど、何か足りない」という思いは、年齢や性別を超えて、多くの人たちが持っているのではないでしょうか。少なくとも、私はバジャの内なる思いに共感し、自分を重ね、応援したくなり、作品が終わるまでずっと、心を動かされ続けました。

京アニは生きている」

 最後に、京都アニメーションの作品なので、やはりあの放火事件を思い起こしてしまったことがあります。

 京アニの作品は、「クラナド」のようなエロゲーを原作にしたものから観始めて、「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん」と観てきました。作品や監督だけではなく、注目の制作会社として、新作を待ちわびるようになりました。

 京アニのどこが好きなのかは、正直、よく分かりません。「クオリティが高い」「オタクのツボを知っている」などの評価は多く、そこは強く同意なのですが、そこだけではないようにも思えます。ただ言えるのは、あの放火事件をニュースで初めて知ったとき、「ものすごく大切な世界のユニークを失いつつある」と感じたことです。

 「バジャのスタジオ」を観終わったときに、放火事件後に初めて作られた作品と信じ込み、「京アニは生きている」と安堵し、目頭が熱くなりました。最初に観たときは、制作時期や監督情報を知らず、ただ「京アニの新作だ!」と感じたためです。ただ、実際は放火事件前に制作された作品ですから、完全に勘違いですよね。。。

 「京アニは生きている」と本当の安堵を得るのはまだ先のことなのかもしれませんが、今はこの勘違いが、一日でも早く現実のものになることを、願うばかりです。