大栗川通信

元記者でマーケターになった中年男「サパロメ」が、本や映画(アニメ、テレビ)や家電のレビュー、育児やブログ運営、ダイエットなどについて雑記をつづります

「ペンとデータは剣よりも強し」示すネット時代の「データジャーナリズム」

 「データジャーナリズム」という言葉をご存知ですか?インターネットの普及でさまざまなデータの入手が容易になった現在。こうしたデータを、新たな報道の武器として取り入れて展開するジャーナリズムのことを指します。

 こう聞くと、「技術革新で情報の入手方法が変わっただけ。なぜ、『データ』を強調し、ジャーナリズムに足し加えないといけないの?」と感じる方もいるのではないでしょうか。データジャーナリズムが着目される背景には、ネットの普及で新たな調査方法の重要性が増していることと、そのためのスキルが求められていることがあります。

 「ペンは剣よりも強し」という格言は、「報道機関などの思考・言論・著述・情報の伝達は、直接的な暴力よりも人々に影響力がある」(ウィキペディアから引用、詳細はこちら)ことを言い表したものです。この「ペン」には、記事を載せる新聞やテレビ、ウェブサイトなど多くの人たちが目にするメディアと、記事を作成できる知識と人脈を備えた記者という二つの存在で構成されていると、個人的には考えています。

 これまで、記者やジャーナリストに求められてきたのは、特定分野の知識と人脈を活用した調査力だったと思います。調査にはさまざまな手法があるかと思いますが、その調査方法の一つとして近年、「大規模なデータの集合体をフィルタリングし、解析することで、新たな解釈を作り出す方法」(ウィキペディアから引用、詳細はこちら)が注目されています。

 例えば、2015年度データジャーナリズムアワードを受賞したウォール・ストリート・ジャーナルの「感染症に対する20世紀の戦い」(解説ページはこちら)。米国で「本当にワクチンは有用なのか」という議論が沸き起こった際に出された調査結果で、ワクチン接種が始まった1960年代前半から、全米の各州で病気の患者が劇的に減ったことを、大量のデータを分析し、分かりやすく視覚的に表しました。

 京都大学が発表した調査結果も興味深いです。母子手帳ビッグデータ分析から「受動喫煙で子どもが虫歯になる可能性が倍増する」とした論文です(詳細はこちら)。喫煙習慣のある親の子は、タバコの煙を「臭い!」と感じる感覚を鈍化させていき、その過程で唾液の中の成分が変化し、虫歯になりやすくなる可能性を示唆しています。

 こうした調査手法で着目すべきは、大量なデータ、つまりビッグデータを操る際に必要なスキルです。具体的には、(1)統計学の知識(2)ITやプログラミングの技術(3)データを可視化するデザイン力―の3つあります。これらは、従来型のジャーナリズムを実践する必須スキルではありません。しかし、大量のデータがネットにあふれる今(必ずしもネットのみのデータが対象というわけではありませんが)、「こうしたスキルがジャーナリズムを実践する際の強い武器になりえるのではないか」という点が、データジャーナリズムが注目される理由であると考えています。

 もうひとつの理由として、無料データ分析ソフトの登場もあると個人的には考えています。3つのスキルを身につけるには限界もありますが、これらのスキルを備えたツールがあれば、既存のジャーナリストたちも「ペンとデータは剣よりも強し」を実践しやすくなります。

 無料データ分析ソフト大手の米タブローは、「データロックスター」をブランディングワードの一つとして展開しています(HPはこちら)。データ分析の領域で、革新的なロックスターのようなユーザーを育てたいためです。反体制のイメージが強いジャーナリストとロックスターは、相通じるところがあるようにも思えます。データジャーナリズムの世界で、新たなスターが誕生することを期待しています。かなりマニアックな話ではありますが…。

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