大栗川通信

元記者でマーケターになった中年男「サパロメ」が、本や映画(アニメ、テレビ)や家電のレビュー、育児やブログ運営、ダイエットなどについて雑記をつづります

「誰かのせい」は不幸への特急券、「自分を変えよ」と説く『嫌われる勇気』

 面倒が起きると、犯人探しをしてしまいがちです。それで「自分は悪くない」と確認できたら、憤慨したり、責任追及したりしたくなるのが人情ですよね。

 ただ、それが家族や職場の同僚の間で起きたことだと、面倒の解決に至らなかったり、解決しても関係にしこりが残るなど、問題解決や今後のコミュニケーションの観点からあまり望ましくありません。どうすればいいのでしょうか。

「偽りの自分」が不幸の始まり

 ベストセラーでアドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』によると、「すべての悩みは人間関係の悩み」といいます。アドラー心理学で上記のような面倒の解決を考えると、どうなるでしょうか。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 そもそも、なぜ『嫌われる勇気』ですべての悩みは人間関係の悩みと断言しているかというと、ほかの人と自分を比べ、勝ち負けを意識することが、人が不幸に陥る出発点だと考えているからです。もしも人と比べて自分が劣っていると感じた場合、そうした劣等感があることをほかの人に知られて負けを認めたくないので、偽物の自分を演じるようになります。

 偽物の自分は、そもそも偽物ですから、そんな自分を心から好きになれません。しかも、偽物だからあらゆる側面でボロが出ます。偽物を守るため、また偽物の自分を重ねて、やがて自分が分からなくなり、幸せを感じられず、存在意義を見いだせなくなってしまいます。

 偽物の自分ではなく、自分の生き方を貫くためには、「嫌われる勇気」が必要です。つまり、ほかの人の評価を気にかけたり、期待にこたえたりすることに、自分の大切な時間のほとんどを割くようなことはしないということです。本当に自分が必要だと思うことを、自分の頭で考え、自分で選び、人に何と言われても、自分らしく自由に生きることを貫く勇気こそが、「嫌われる勇気」と解釈します。

他人の課題に介入するな

 それを実現するための一つの方法が、「課題の切り分け」です。本当の自分を失い、偽物の自分を作ってしまいそうになるような対人関係の悩みに直面したら、まず「それは誰の課題なのか」を考えてみましょう。そして、自分とほかの人を良い意味で切りはなすのです。ほかの人の課題を抱え込まず、自分は自分の課題だけを解決していきましょう。

 例えば、子どもが全く言うことを聞かず、「また人前で悪戯をして恥をかいた!」と憤慨し、怒りすぎたり、「うちの子は駄目な子だ」と落胆したりするなどして、自己嫌悪や絶望感に陥ることもあるのではないでしょうか。

 これをアドラー心理学的に考えると、悪戯をするかしないかは子どもの課題であり、恥をかいたと感じるのは親の課題です。これを一緒くたに考え、課題を分けずに考えると、子どもをコントロールしようと、コントロールできないことへの怒りへと発展していきます。

 人は他人を変えることはできませんし、すべきではないというのがアドラー心理学の立場だと、『嫌われる勇気』では解説します。誰もが自分の課題は、自分の課題として考え、選び取っていくべきだからです。確かに、子どもはすべてのことを自分で判断することはできないので、生死にかかわる問題や、暴力、窃盗などの犯罪行為以外は、それがたとえ間違った選択であったとしても、本人に選ばせ、苦い経験をさせ、次からはそうした判断をしないよう成長を促すことを推奨しています。

 理論としては分かりますが、世のパパママの腑に落ちないことは、分かります。しかし、少なくとも叱りすぎたり、「どうしてうちの子は駄目な子なのか」と考えた時点で、すべての問題を「子どものせい」にし、他人の課題に介入しています。

 これはアドラー心理学で考えると、不幸への特急券であり、そこから逃れるためには、他人の課題に介入せず、自分の課題を解決し、自分で変えられるところを、自分の意志で変えていく以外にありません。たとえば、「子育て中に恥をかくことは当然」と開き直り、他人の目を気にしない、あるいは恥をかく可能性の高いところには最初から出入りしないようにするなどです。

 アドラー心理学を、子育ての参考にするのは、なかなか難しいことかもしれません。ただ、課題の切り分けをせず、子どもをコントロールしようとし、それができないときに「お前が悪いんだ」と口にしたり、態度で示してしまうことは、どう考えても良いことのようには思えません。もし、全くの対岸の火事とは思えない方がいたら、アドラー心理学の考え方を少しでも参考にすると、自分にとっても、子どもにとっても、幸せへの近道かもしれません。

生きるために大切なこと

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