大栗川通信

元記者でマーケターになった中年男「サパロメ」が、本や映画(アニメ、テレビ)や家電のレビュー、育児やブログ運営、ダイエットなどについて雑記をつづります

新しくないのに新しい超新鮮で感動的な恋愛物語「君の名は。」

 超メガヒット中の恋愛アニメ「君の名は。」。「こりゃ見るっきゃナイト!」ということで、ビジュアル的にあまりよろしくないのですが、中年おっさん3人でキャッキャしつつ逝ってきました。

 結果、これも通報されてもおかしくないレベルなのですが、おっさんたち大号泣。「会いたい」「好きだ」という恋愛の本質的な魅力をダイレクトに感じる、本当に素晴らしい作品だったので、致し方ないということでご容赦を。

 新しくないのに新しさを感じる設定や着想、丁寧に編み込まれる神秘的な日本の逸話などによって、SFでもあり、サスペンスでもあり、ファンタジーでもあるという、全く新しい(かどうかは個人的な感想なので分かりませんが…)超新鮮で感動的な恋愛物語が誕生したという印象です。

あらすじ

 田舎町の女子高校生、三葉(みつは)。町長の娘として、神社の跡取りとして、田舎町の生活に閉塞感を感じていたある日、「異変」が起ります。ずっと憧れていた東京で、自分が男子高校生になっていたのです。一方のこの男子高校生、瀧(たき)にも同じように「異変」は起こり、三葉になっていました。

 この異変について、2人は当初、夢だと思っていました。夢のように覚めて、必ず元の自分に戻るからです。しかし、周囲の友人たちから「昨日は別人のようだった」などと聞かされ、互いにこの異変が起こる度に、メモを残すようになります。そうして2人は、自分たちが定期的に入れ替わっていることを知ります。

 そんなある日、瀧は目覚めると、あこがれのバイト先の先輩とデートの約束をしていたことに驚きます。入れ替わっていた三葉の仕業です。戸惑いと喜びでデートに行く瀧ですが、会話が続かず、デートは失敗。帰り際、先輩からこんな指摘を受けます。

「他に好きな人がいるんじゃない?」

 先輩の指摘で、いつの間にか三葉へ想いを寄せていたことに気付いた瀧は、思い切って三葉に初めての電話をします。しかし、何度かけても電話は繋がらず、しかも、入れ替わりがその後、途絶えてしまいます。居ても立ってもいられなくなった瀧は、三葉に入れ替わっていたときの町の風景を頼りに、三葉を探す旅に出ることを決意します。

 しかし、その旅で瀧を待ち受けていたのは、思いもよらなかった衝撃の事実だったのです。

軸ぶれない刷新

 ネタバレになるため、衝撃の事実については本編を観ていただくとして、個人的な感想としては、「よくこんなすごい脚本書けたな…」という印象です。物語書くプロの人が嫉妬するのは、超理解できます。誰とは言いませんが…。

 この物語冒頭の男女入れ替わり。まあ、映画やアニメでよくある設定ですよね。ただ、この後に続く衝撃の事実でも共通しているのですが、新しくはないんですが、新しいんですよね。

 よくあるのが、同じクラスの誰々さんとの入れ替わり、みたいな知っている人同士の入れ替わり。「君の名は。」は、全く知らない人同士の入れ替わりなんですよね。そして最大の違いというか新しいところは、よくある「入れ替わり」を軸に日常の変化や事件が発生するという話ではなく、その先の衝撃の事実に繋がっていくというところではないでしょうか。

 そのほかの新しいところは、衝撃の事実の部分にかかわるので触れませんが、共通しているのは、設定は新しくないのですが、アレンジや視点の切り替えなどによって、あたかも新しいものにしてしまっているところです。それが小手先のものだったり、単なるマニアなものではなく、物語の軸の軸である「恋愛」にしっかりと結びつく必要な刷新であるため、この物語にある多くの恋愛風景が、新鮮に感じられます。

 神秘的な日本の逸話も、単なる「へー」な知識に終わることなく、すべてしっかりと軸の軸に帰結する伏線となっていることも素晴らしいです。特に印象深かったのが、口噛み酒(巫女がご飯を口で噛んで液状にしたものを発行させたお酒)と黄昏時(日が完全に沈む前のほんの一瞬、現世とあの世の区別がぼんやりする時のこと)という言葉ですかね。これらも新しくはないんでしょうが、こうした恋愛物語で、唐突ではなく、効果的に使われることは、やはり新しいことなのではないでしょうか。

興行収入が邦画歴代5位に

 ということで、こうした新しくはないが新しいさまざまな要素が丁寧に編み込まれることにより、今までに誰も見たことのない恋愛物語となった「君の名は。」。なんと、興行収入は145億円とのこと(参考記事『興収145億円突破「君の名は。」 公開前の見積もりは15億円』)。ちょっとピンとこないかもですが、当初予想の10倍、あの「アナ雪」を上回る勢いで100億円を突破したそうです。※その後、さらに売り上げを伸ばして邦画歴代5位とのこと(参考記事『アニメ「君の名は。」、興行収入が邦画歴代5位に、東宝「164億円超す」』)※2016年10月27日追記。

 日本を代表する作品になりそうなので、まだの方は是非、映画館へ。ただし、とても爽やかな作品なので、おっさんはおっさん同士でいかないように。まあ、作った人も全開でおっさんなのですが(作った人「新海誠」)。

君の名は。

君の名は。