究極の既得権益市場かもしれない絵本の世界◆絵本研究(1)
究極の既得権益市場かもしれない――。
訳あって調査を開始した絵本の市場ですが、
ファーストインプレッションはそんな感じです。
こちら国内絵本ベストセラー20とのことですが、
ほとんどが「古典」とのこと。
その理由はこちら。
絵本研究家の広松由希子は「絵本はふつう大人が子どもに買ってあげるもの。そんな時、自分が子どものころに楽しんだものか、良書という評価が定まったものを選びがちだ」と説明する。
こうした絵本市場の独特な構図のせいで、新作が容易には売れにくくなっている。「絵本は文化ですから、いまの大人たちが、同じ時代を生きる子どもたちに向けてつくっている作品も、積極的に選んでもらいたい」。広松は、そう話す。
(中略)
絵本はフルカラー刷りのため原価が高い半面、読者が限られているので初版の部数が少ない。普通は一般書籍より利益率が低く、版を重ねていかないと採算がとれない。だが、ここ数年、重版率は下がり、絶版までの期間も短くなっている。
なるへそ、
「親子代々」ということで強い古典に対して、
新しい作品が広まりずらい市場構造があるのですね。
この市場構造を理解して、
これを利用している勢力がいるのでは。
何らかの手法でこれを既得権益としているのでは――。
そんな直感がありました。
そんな絵本の市場規模はこんな感じらしいです。
絵本を含む児童書の推定市場規模は795億円(2010年、出版科学研究所調べ)。「ハリー・ポッター」効果もあって1100億円に達した02年と比べ3割近く減った。
ここまでの引用記事はこちら「えほんのちから [Part1] なぜ「古典」が強いのか?」。
市場規模の分析としてはこちらがもっと突っ込んで行なっています。ちょっと長いですが参考までに。
絵本作家は儲かりません。
絵本の出版社も儲かりません。
職業としても、ビジネスとしても、成り立たないケースの方が多いです。
(稀にミリオンセラーになると売上10億とかいくケースもありますが・・・)
なぜ儲からないのか(成り立たないのか)?
絵本を買う人が少ないからです。
要は市場規模の問題ですね。
「出版指標年報2009」によると
児童書の市場規模=940億
子供(14歳以下)=1700万人強
となっています。
940億という数字は、
児童書全体の数字なので、そこから「絵本」の市場規模を
概算すると
およそ400億程度だと言われてます。
その400億の内訳ですが
大別すると
A.往年ベストセラー 1/3
B.図書館、公共 1/3
C.新刊 1/3
になります。
上記から、
書店で買われる新刊絵本の市場規模は、約130億と推測されます。
絵本の平均単価を仮に1300円だとすると、
130億÷1300円=1000万冊の新刊絵本が書店で買われている計算に
なります。
従って、
一人当たり年間1冊買えば、1000万人
一人当たり年間3冊買えば、333万人
の人が、新刊絵本を購入している計算です。
あくまでも感覚値ですが、絵本を買う人は、年間2~3冊位は
買っていると思うので、
ざっくり、毎年500万人位が、新刊の絵本を購入していると考えるのが妥当だと思われます。
子供に絵本を買うのも、基本的に期間限定なので、
イメージとしては、
毎年500万人が入れ替わり立ち替わり書店に訪れて、年間2~3冊の
新刊絵本を購入している。
と言えます。
ちなみに、
『白書出版産業』によると
2002年の絵本の新刊点数は1794点とありますので、
少子化の流れと、出版業界の推移から推察して、
現在、新刊の絵本が年間約1500作品出版されていると仮定すると
1000万冊÷1500作品=6666部 が 新刊一冊当たりの平均実売数と
なります。
500万人が多いか、少ないか。
「絵本の良さ」から考えると、少ない。ですねやっぱり。
日本の人口(1億5千万)の約3%強のシェアしかないので、
残り97%はまだ未開拓ゾーンなのです。
今回は、大分ざっくり分析なので、あくまでもイメージとしての数字ですが、
僕は、こんな感覚で考えてます。
今日のおさらい。
1.絵本全体の売上の1/3は図書館だった。ということ
2.絵本全体の売上の1/3は、誰もが知っている有名な絵本。ということ
(それも毎年、毎年同じ作品が売れ続けている・・・という現実)
3.新刊の絵本売上は全体の1/3で、1000万部が実売部数。という仮説。
4.大体500万人が、書店で新刊絵本を年間2~3冊購入しているのでは。という仮説
つまり、新刊の絵本を広めるには、従来どおり書店で絵本並べてても
限界じゃない?
上記の分析の引用元はこちら(絵本のマーケットはブルーオーシャン?)。
ということで続報は後ほど。
福音館書店と「こどもMOE」という存在が気になるので、その辺の調査を行なっていきます。